2004-01-01から1年間の記事一覧

明ケ睨み煙(ケム)を吐くタクシーの列正確にずれてゆく非常灯

乳色のシチューに浮くバターの球を集めてつくった島で告白

ポケットの中の屍骸を握り締めショウウインドウ越し笑う泣き虫

冬に呼ばれ落つる木の葉が「オワリヨ」とフロントガラスに張り付き囁く

皮膚を焼く鍋の影より立ち昇る温度醒ましてサリーの夕食

フラボノで風船は浮くのかしらと酸欠気味にガム噛む女子と

故郷(くに)むかうヘッドライトにはりついてふるえる六肢(むし)の羽白地に紋

コーヒーとサンドイッチと無愛想薫りしここは純喫茶「ぬくもり」

灰落つるまでに終われよ世界よ終わらぬオクラホマミキサーで

電柱の無い国に居る飼犬となり鼻濡らし歩く不夜街

涙を膿を在りと在らゆる体液を荒野にてただ垂れ流す 立ち

ふりかへりヘドホン外せば君は暈灼(ぼや)けり耳に音楽手に眼鏡

アスファルト残暑灼けつく影睨み影は彼岸の秋空見据え

泣きながら「だめら!」と君 「だめら!て」とツッコむ俺に君はグーで

スッピンの君とタンゴで永久を誓おう夜更け輝く生鮮売場で

コンクリに跳ねる頭で視し世界赤白黄色君は綺麗だ

お母さんが台所でドラゴンを殺す音がしてきたら夕げ

酔い覚ます宵の自販機釣銭を敢えて忘れて知らぬ人想ふ

糸を抜き開いた夏に汗垂らし俺のおもひで黙示録、完。

砂と汗気化する香りはAPPOLO鼻腔くぐり空を満たし月

船着場にて人を待つ誰と無く台風が近付いてきている

コーヒーが足らぬ机上の摩天楼滑るマウスと世界の王

太陽の塔を失くして仕舞つた尻から落ちた何処か此の世へ

モニタ越しに世界を語る鍵盤と( )の中で笑う君かよ

サイレンとサイレントと唐突に懐かしく成り往く今日の日と

生き様だとか馬鹿なこと言ってんなカッコいいものそれはサイドカー

右に行くつもりが左引き返すつもりは無い一周して戻る

夜を鞣(なめ)すTVの中の魔術師(マジシャン)と台風情報乾くペディキュア

マトリクスに 手紙に 乾いた頬に 粒粒を置く 粒粒を置く

夕闇に染まるを待たず寝静まる青にならない信号の青