2004-01-01から1年間の記事一覧

雨音に何も無い夜の音紛れブラウン管の俺と目合わす

暑い朝の寝袋の穴より覗く既に働く人の横顔

屋根の上ひなたぼこする猫がいや靴だあれ靴猫じゃねえ靴

痒い背中に虫居らず寂しい

ドレッシングつけ忘れられがちな顔という他説明がつかない

汗沁む眼の先陽炎に舞う白 雪の幻影かと思えば灰

そうだよねこれがきみのいちばんの写真右隅心霊微笑む

妻の居る友を見舞い帰るそしてひとり寝込むを天井笑う

破れ傘骨伝う滴を視てゐる何時の間にや地下道

耳澄ます向うも耳澄ましてゐるな受話器姪の声で泣くやあ

「ドレッシングは別売りです」再読す ぬるくなる牛乳を尻目に

温めたパスタ頬張るTVの中 フルシアンテがジーザスに見え

永久という獣に怯え君を抱くこの世全ての眠れぬ夜に

予報です日中は頬撫でる雨夜半より鉄人の足音

黒い夜黒い子供ら黒い銃撃ち 終わる また撃ち また終わる

七人の悪魔超人編開始 五重に聳(そび)えるコタツをリングに

受話器より懐かしき声コンビニの袋の中でアイス溶けつつ

寝る前に見る夢を決め朝起きてその夢を見たことにして生きる

拾円を拾う俺は月を知らない煙突に登れ掃き溜めの犬

コーヒーを淹れる君の背に我は見る壁のポスター湿気てたわむを

風の道 我の無くした片割れと思うて見れば知らぬ靴下

一昨昨日一昨日昨日今日の今はやくしないと汽車に遅れる

さあ倒せ 俺の頭の棒倒せ 早い者勝ちティッシュあげます

煮込み過ぎ腐りし鍋のこの匂い換気扇より空へと放つ

ゴリラー ゴリラゴリラー ゴリラー ゴリラゴリラー 檻の前の子

肩震う風舞う袋を見ていた月も見ていた眼鏡の縁も

草原を歩む駈けずに弱肉の我喰う奴の目見据えて候

空を飛ぶペットボトルが局地的甘露降らせて命中寸前

日の下に着て来ちまったこのジャンパーをどうしてくれようと笑う四月

満開の桜下を駈ける犬の背に乗りたいと君待ってろと俺